中国によるレーダー照射

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【徹底解説】中国によるレーダー照射は何が危険なのか?意味・過去の事例・国際法上の問題を分かりやすく解説

ニュースで度々取り上げられる、中国軍艦艇による自衛隊や他国軍への「レーダー照射」
一般的に、この行為は「軍事的な挑発行為」あるいは「攻撃予告」と受け取られ、国際社会で強く非難される行動です。

しかし、「普通のレーダーと何が違うのか?」「なぜそこまで危険視されるのか?」を正確に理解している人は多くありません。
本記事では、中国によるレーダー照射問題の核心と、その危険性について初心者にも分かりやすく解説します。

1. 「火器管制レーダー」と「捜索レーダー」の決定的な違い

レーダー照射問題の本質を理解するためには、軍艦が積んでいるレーダーの種類の違いを知る必要があります。主に以下の2種類があります。

① 捜索レーダー(Search Radar)

  • 目的:周辺に何があるかを探すためのレーダー。
  • 動作:くるくると回転しながら電波を出し、広範囲を監視します。
  • 意味:「あそこに誰かいるな」と確認する行為。これは日常的に行われており、敵対行為ではありません。

② 火器管制レーダー(Fire Control Radar)

  • 目的:ミサイルや主砲を命中させるために、標的を正確に追尾するレーダー。
  • 動作:特定の目標に対して、強力な電波を継続的に照射し続けます(ロックオン)。
  • 意味:「お前を狙っている。いつでも引き金を引ける」という意思表示。
捜索レーダーと火器管制レーダーの照射範囲の違いを図解
図解:捜索レーダーは懐中電灯、火器管制レーダーは銃の照準に例えられる

わかりやすい例え話

  • 捜索レーダーは、暗闇で懐中電灯を振り回して「誰かいないかな?」と探す行為。
  • 火器管制レーダーは、相手の額に銃のレーザーポインター(照準)を合わせる行為。

つまり、火器管制レーダーの照射は、「実弾を発射する直前の最終段階」であり、偶発的な戦闘を引き起こしかねない極めて危険な行為なのです。

2. 過去の主要な事例:2013年の事件

中国によるレーダー照射で最も大きく取り上げられたのは、2013年の事件です。

事件の概要

2013年1月30日、東シナ海の公海上において、中国海軍のフリゲート艦「連雲港」が、海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」に対して火器管制レーダーを数分間にわたり照射しました。
また、同月には海上自衛隊のヘリコプターに対しても同様の照射が行われたとされています。

日本政府の対応と中国の主張

  • 日本側:慎重なデータ解析の結果、「特異な事案」として公表し、厳重に抗議しました。
  • 中国側:当初は沈黙していましたが、後に「火器管制レーダーは使用していない」「通常の監視活動だった」と事実関係を否定しました。

この事件は、日中関係の緊張を一気に高める大きな要因となりました。

3. 国際的なルール(CUES)への違反

海の上には、偶発的な衝突を防ぐための国際的な行動規範があります。それがCUES(Code for Unplanned Encounters at Sea:洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)です。

2014年に中国も含む各国で合意されたこの基準では、以下の行為を控えるべきとしています。

  • 火器管制レーダーの照射
  • 相手艦船に向けた大砲やミサイルの指向
  • 攻撃を模擬した行動

中国によるレーダー照射は、このCUESの精神に反する行為であり、「予測不可能な事態」を招くリスクを冒すものです。

4. なぜ中国はレーダー照射を行うのか?

軍事専門家の間では、以下のようないくつかの理由が推測されています。

  1. 現場の独断:上層部の命令ではなく、現場の艦長の判断や、練度不足による誤操作の可能性。
  2. 瀬戸際外交(威嚇):相手がどこまで反応するかを試す、あるいは「この海域には入るな」という強い警告。
  3. 情報収集:自衛隊の艦艇が、ロックオンされた際にどのような回避行動や電子的な防御反応(ECM)をとるかデータを集める目的。

5. 日本だけではない?フィリピンなどへの事例

レーダー照射の被害は日本だけにとどまりません。中国は南シナ海においても、フィリピンやベトナム、そしてオーストラリア軍の哨戒機などに対して同様の危険な行為を行っていると報告されています。

特に2022年には、オーストラリア軍の哨戒機が中国艦艇からレーザー照射を受け、安全運航が妨害されるという事件も発生しています。これは地域全体の安全保障問題となっています。

東シナ海と南シナ海の地図と周辺国の位置関係

まとめ:偶発的な衝突を避けるために

中国によるレーダー照射は、単なる「嫌がらせ」ではなく、ミサイル発射の一歩手前という「準・軍事攻撃」に近い行為です。

現場の自衛官は、ロックオンされた瞬間に「撃たれるかもしれない」という極限の緊張状態に置かれます。万が一、自衛隊側が「攻撃された」と判断して反撃すれば、即座に戦争へと発展するリスクがあります。

冷静な対応を続ける現場の努力と同時に、外交ルートを通じた再発防止の徹底と、国際社会と連携した抑止力の強化が求められています。


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