生成AIの爆発的な普及により、世界中で「電力不足」が叫ばれています。データセンターの消費電力急増はもはや待ったなしの状況です。しかし、ピンチはチャンス。このエネルギー危機に対し、日本の技術力が驚くべき解決策を提示し始めています。
今回は、2025年から2026年にかけて大きな動きを見せている「電力効率を高める技術」を持つ注目企業を、半導体から「雪で冷やすデータセンター」まで一挙にご紹介します。
1. データセンターの常識を変える:「光」と「雪」の技術
AI時代、最も電力を消費するのがデータセンターです。ここには、日本ならではのユニークかつ最先端のアプローチがあります。
NTT:電気から「光」へ。IOWN構想がいよいよ現実に
NTTが推進する次世代ネットワーク構想「IOWN(アイオン)」が、2026年に重要なマイルストーンを迎えています。
光電融合デバイスの実装: 従来、サーバー内で行われていた電気信号のやり取りを「光」に置き換えることで、圧倒的な省エネを目指しています。2026年には、この光電融合デバイスを搭載したサーバーの商用化が見込まれており、電力効率を従来の8倍に高める目標を掲げています。
将来的には100倍へ: 2032年頃には、電力効率を現在の100倍にするという野心的なロードマップも進行中です。
ソフトバンク & さくらインターネット:北海道が「AIの心臓部」に
冷涼な気候と再エネ資源に恵まれた北海道が、巨大データセンターの集積地として熱い視線を浴びています。
ソフトバンク: 北海道苫小牧市に国内最大級の計算基盤を持つ「苫小牧データセンター」を建設中。2026年度(FY2026)の開業を目指しており、北海道の再生可能エネルギーをフル活用する計画です。
さくらインターネット: 石狩データセンターの拡張を続けており、2025年3月には3号棟(C・Dゾーン)への追加投資を決定。生成AI需要の急増に対応するための「バッファ」を確保する動きを見せています。
White Data Center(美唄市):雪でサーバーを冷やし、ウナギを育てる?
北海道美唄市の「ホワイトデータセンター」は、世界でも類を見ないユニークなエコシステムを構築しています。
雪冷熱エネルギー: 除雪で集めた「雪」を使ってサーバーを冷却。これにより、従来の空冷方式に比べて冷却コストを約55%削減することに成功しています。
廃熱でウナギ養殖: さらに驚くべきは、サーバーからの廃熱(温水)を使って「ウナギ」や「ニジマス」などを養殖している点です。データ処理と食料生産を両立させるこの「Snow Eel(雪うなぎ)」プロジェクトは、持続可能なモデルとして海外からも注目されています。
2. 次世代エネルギー:塗る太陽電池「ペロブスカイト」
ビルの壁や窓が発電所になる未来が、すぐそこまで来ています。日本発の技術である「ペロブスカイト太陽電池」の商用化競争が2025年以降、一気に激化しています。
積水化学工業:2027年の量産へ向けた新会社設立
フィルム型ペロブスカイト太陽電池で世界をリードする積水化学は、2024年末に大きな決断を下しました。
新会社「セキスイソーラーフィルム」: 2025年1月に新会社を設立。シャープの堺工場跡地を活用し、2027年には100MW(メガワット)規模の量産ラインを稼働させる計画を発表しました。
軽さと曲がる強み: 従来のパネルが置けなかった耐荷重の低い屋根や、曲面への設置が可能になり、再エネ導入の余地を劇的に広げます。
パナソニック:発電するガラス
パナソニックは、ガラス建材と一体化したペロブスカイト太陽電池(BIPV)を開発しています。
大阪・関西万博での実証: 2025年の大阪・関西万博において、この「発電するガラス」を実証展示。透明性を保ちつつ発電できるため、都市部のビルの窓そのものを発電所に変える技術として期待されています。
3. パワー半導体とE-Axle:電気を無駄にしない「質」の追求
電気自動車(EV)や家電の省エネ性能を決めるのは、電気を制御する「パワー半導体」と、それを動力に変える「モーター」です。
三菱電機・ローム・デンソー:SiC(炭化ケイ素)の覇権争い
従来のシリコン(Si)に代わり、電力損失を大幅に減らす次世代素材「SiC」の採用が進んでいます。
三菱電機: 産業用や鉄道用の「フルSiCモジュール」で圧倒的な信頼性を誇ります。
ローム: 第4世代SiC MOSFETにより、EVの電費を改善し、バッテリーを長持ちさせる技術で先行しています。
デンソー: トヨタ車への搭載実績を背景に、車載品質のSiC技術を確立しています。
ニデック(旧日本電産):E-Axleの進化
EVの心臓部である駆動用モーターシステム「E-Axle(イーアクスル)」。ニデックは第3世代モデルに加え、バッテリー管理システムなども統合した「X-in-1」ソリューションを展開し、部品点数の削減とシステム全体の高効率化を推進しています。
4. スマートホームとVPP:家庭の電力を賢く使う
Nature(ネイチャー):スマホで家の電気を操る
スマートリモコン「Nature Remo」で知られるNature社は、家庭のエアコンや蓄電池を制御して電力需給を調整するVPP(バーチャルパワープラント)事業を展開しています。
Matter対応: 2025年にはスマートホーム共通規格「Matter」への対応を強化し、より多様な機器との連携を可能にしています。これにより、ユーザーは快適さを損なうことなく、自動で節電やピークカットに貢献できるようになります。
まとめ:2026年は「実装」の年
これまでの「研究開発」フェーズから、2026年はついに「社会実装」のフェーズへと移行しています。 NTTのIOWNによる光コンピューティング、北海道での再エネ×データセンター、そして積水化学のペロブスカイト量産準備。これらの技術は、単なるスペック競争を超え、私たちの生活インフラそのものを「低炭素・高効率」な形へと塗り替えようとしています。
投資家にとっても、テック好きにとっても、これらの日本企業の動きからは目が離せません。
参考文献・出典
NTT IOWN構想と電力効率目標
ソフトバンク 苫小牧データセンター計画
ホワイトデータセンター(雪冷熱・ウナギ養殖)
積水化学工業 ペロブスカイト新会社・量産計画
パナソニック 大阪万博・発電ガラス
さくらインターネット 石狩DC拡張
Nature Inc Matter対応

