AIブームやDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速により、データセンターの重要性はかつてないほど高まっています。しかし同時に、**「電力消費量の急増」**は、運用コストを圧迫するだけでなく、環境負荷の観点からも喫緊の課題となっています。
「サーバーを止めるわけにはいかないが、電気代は下げたい」
そんなインフラ担当者や経営層に向けて、データセンターの電力を効率的に抑えるための実践的なアプローチを5つのポイントに絞って解説します。
1. 空調効率の最適化(アイルキャッピングと温度設定)
データセンターの電力消費のうち、IT機器に次いで大きな割合を占めるのが**空調(冷却)**です。ここを最適化することが、最も即効性のあるPUE(電力使用効率)改善策となります。
* ホットアイル/コールドアイルの分離:
サーバーの吸気側(冷気)と排気側(暖気)を物理的に分け、混ざり合わないようにする「アイルキャッピング」を徹底します。これにより、空調機が無駄にフル稼働するのを防げます。
* 設定温度の見直し(ASHRAEガイドライン):
「サーバー室はキンキンに冷やすもの」という常識は過去のものです。現在はASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)のガイドラインに基づき、設定温度を27℃〜28℃程度まで上げる運用が一般的になりつつあります。わずか数度の設定変更で、空調電力は大幅に削減可能です。
2. 「ゾンビサーバー」の撤去と仮想化の推進
驚くべきことに、データセンター内のサーバーの一定数は、何の処理も行っていないのに電力を消費し続ける**「ゾンビサーバー(Comatose Servers)」**であると言われています。
* インベントリの棚卸し:
DCIM(データセンターインフラ管理)ツールを活用し、CPU使用率が長期的にゼロに近いサーバーを特定、物理的にシャットダウンまたは撤去します。
* 仮想化とコンテナ化:
稼働率の低い物理サーバーを仮想環境に集約(コンソリデーション)することで、ハードウェアの台数そのものを減らし、電力とスペースの両方を削減します。
3. 最新冷却技術の導入(液浸冷却・外気冷却)
従来の空冷方式には限界が来ています。特にAI向けの高性能GPUサーバーは発熱量が凄まじいため、次世代の冷却技術への投資が長期的にはコストダウンにつながります。
* 液浸冷却(Liquid Cooling):
サーバーを絶縁性の液体に直接浸して冷却する方式です。空調ファンが不要になるため、冷却エネルギーを90%以上削減できるケースもあります。
* 外気冷却の活用:
寒冷地や涼しい季節には、コンプレッサーを使わず、外気をフィルタリングして取り込むことで冷却を行います。日本の気候でも、春・秋・冬の活用で年間を通した電力消費を大きく下げられます。
4. 電源供給ロスの最小化
電力がサーバーに届くまでの「変換ロス」も見逃せません。
* 高効率UPS(無停電電源装置)の導入:
最新のUPSには、電力品質を維持しながらロスを極限まで減らす「エコモード」が搭載されています。
* HVDC(高電圧直流給電)の検討:
交流(AC)から直流(DC)への変換回数を減らすことで、送電ロスを低減するシステムです。初期投資はかかりますが、大規模センターほど効果を発揮します。
5. AIによる運用の自動最適化
人間による監視・調整には限界があります。Googleなどのハイパースケールデータセンターでは、すでにAIが空調や電力を制御しています。
* AIによる予測制御:
気象データ、サーバー負荷の予測に基づき、AIが「これから熱くなる場所」を予測して先回りして冷却を強化したり、逆に余裕がある時は冷却能力を絞ったりします。これにより、過剰冷却を完全に排除できます。
まとめ:PUE改善は「継続的なプロセス」
データセンターの省電力化は、一度設定して終わりではありません。
* 現状のPUEを正確に計測する
* アイルキャッピングなど物理的な対策を行う
* 不要なサーバーを整理する
* AIや新技術でさらに効率を上げる
このサイクルを回すことが、コスト削減とサステナビリティ(脱炭素)の両立につながります。まずは「今の設定温度は適切か?」「動いていないサーバーはないか?」という確認から始めてみてはいかがでしょうか。
